音楽への"homage"を主題として、思いつくまま気侭に書き連ねています。ブログ名はアルノルト・シェーンベルクの歌曲から
Hommage a Michel Legrand ミシェル・ルグランをたたえて

Hommage a Michel Legrand ミシェル・ルグランをたたえて

ひっくり返した玩具箱

としか表現しようがない。

友人宅を訪問したら、男の子がいました。友人の子供です。人懐っこそうなこの子が、宝物のように大事にしている大きな玩具箱を持ってきて、その中身をひっくり返し「ねェ、おじさん(おばさん)、ボクのこの玩具、こんなに面白いんだよ」といって一緒に遊ぼうと誘ってきます。一緒になって遊ぶと、それこそ次から次へと、飽くことなく様々な玩具を繰り出してきます。その遊び方は、男の子自身が編み出した、その玩具が想定していないような独創的なもので、一緒に遊んでいる大人を驚かせます。そして子供らしい気まぐれさか、ある玩具にすごく夢中になっているかと思ったら、突然、別の玩具を繰り出して、前と同じように夢中になって遊ぶのです。

そんな音楽家です、ミシェル・ルグランは。

ミシェル・ルグランとは

ミシェル・ルグラン Michel Legrand  1932年2月24日 – 2019年1月26日 86歳
フランスの天才的な音楽家。作曲家、指揮者、ピア二スト、歌手として活躍した(と過去形で書かねばならないのが残念)
父は自身のバンドを持つ指揮者・作曲家のレイモン・ルグラン、姉は歌手のクリスチャンヌ・ルグラン。
パリ国立高等音楽院で学び、師事したナディア・ブーランジェからはその才能を高く評価された。

作曲家、編曲家、ピアニスト、歌手、指揮者と書かれますが、そのどれかに絞ることはまったく不可能です。 そのどれにおいても素晴らしい才能を示し、作品を聴くことができます。しかもその作品のジャンルは、映画音楽、ポピュラー、ムード音楽、ジャズ、クラシックまでと幅広いのです。あまりにも広すぎる(?)ので、たとえば映画音楽家として、あるいはジャズプレーヤーとして、というようにそのどれか一部にスポットライトを当ててしか語られていません。それは、映画評論家は映画音楽家として、ジャズ評論家はジャズプレーヤーとしてのM_L(ここではミシェル・ルグランをこう表記する)を、というように自分の興味、あるいは仕事の部分からでしか捉えていないという語る側のキャパシティの問題でしょう。これでは、M_Lの魅力を理解することは不可能です。

しかも本人M_Lにとっては、そのようなジャンルで区切ることなど意味がありません。なぜなら、そのどれも好きなのであり、それを作ったり、歌ったり、弾いたりすることも好きなのですから(デューク・エリントンの言葉を引用するならば「音楽には2種類しかない、いい音楽と悪い音楽だ」ということでしょう)。M_Lが録音したCDを並べてみればすぐ理解できますが、映画用として作ったものを、別の機会では、オ-ケストラで録音したり、ピアノトリオで演奏したり、歌手(女性歌手が多い)の録音に使ったりと、様々なフォーマットに変えることもしています。まるで1つの玩具をもとに様々な遊び方を考える子供のように。

M_Lと肩を並べられるレベル、深さと幅をもって音楽活動している人がいるでしょうか?

その旺盛な創作力により、多作といえます。時には?と思うものもありますし、そのすべてが成功しているわけでもありません。しかし、そのような仕事でも、注意深く聴くならば、驚きとともに様々な発見があります。 そのような作品も含めてM_Lが好きです、「ファン」というのはそういうものです……

好きな曲は?

迷います。

映画関係なら「愛と哀しみのボレロ」(フランシス・レイと協作となっていますが)もあるし「おもいでの夏」も捨てがたいし「華麗なる賭け」も…

ジャズ関係なら「ルグラン・ジャズ」から始まって「シェリーズマンホール」「live at Jimmy’s」からフィル・ウッズ、ステファングラッペリとの競演、自身のオーケストラやピアノトリオまで

歌手のアルバムだと、バーブラ・ストライザンド、サラ・ヴォーン、リナ・ホーン、ローラ・フィジィからキリ・テ・カナワ、ジェシー・ノーマンなどなど

クラシックだと、フォーレとデュリフレの「レクイエム」を指揮したアルバム、サティや近代アメリカ作曲家のピアノ作品を弾いたものまで、作品を数え上げたらきりがありません。

手塚治虫の「火の鳥」アニメ映画にも音楽を提供していました。これはハズレでした…..

濱田高志さんの力作「風のささやき」(音楽之友社)のディスコグラフィーを見て驚きました。これまでかなりのCDを集めてきたつもりでしたが、それはごく一部でしかなく、コンプリートするなどはとても難しいようです。

その中から、たった一つを選べといわれたら、やはり「シェルブールの雨傘」でしょうか、
M_Lのエッセンスが詰まっていますから。

声楽家の友人がいます。若かりし頃、ルグランの来日公演(新宿厚生年金会館)に一緒にいったこともありました。ある時、その友人に言われたことがあります。 「今度買ったM_Lのレコードで、この曲では、こんなことをしている、あんなことをしている」といったことを夢中で話したなかで「日本でM_Lのこと(作品を、です)を一番愛しているのはボクだ」とアナタは言ったと。

これからM_Lについて、できれば作品のコアとなる面から気侭に書いてみます。

さて最初の話に戻すと

時間もたったので帰ろうとしたら「え~、もう帰っちゃうの、おじさん(おばさん)?これからもっと面白くなるのに…」というのです、この男の子は。

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